えるてき!忍(しのび)スキルカンスト!『影裏(えいり)』ブックレビュー

 

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2018.02.12

えるてき!忍(しのび)スキルカンスト!『影裏(えいり)』ブックレビュー

 
 

女好き度なら誰にも負けない!
・・・なんて星の数ほどいるレズのひとり。
生まれてこの方ずっとレズ。
日々女性を熱っぽい目で見つめる
ワタクシにこちゃんがL的な角度から日々の出来事を綴ります!
 
 
オッス、オラにこちゃんだってばよ!
今回のえるてきは第122回文学界新人賞受賞作の『影裏(えいり)』のブックレビューにこ!

※うっすらネタバレ含むから注意してね※

審査員全員ベタ褒め満場一致の受賞作よ!
文学好きのセクマイにはオススメ!それじゃ、「えるてき!忍(しのび)スキルカンスト!『影裏(えいり)』ブックレビュー」はじまりはじまり~♪


 

作品のあらすじとみどころ


この作品、すごいわよ。
徹底したローテンションで、冷静で、騒ぎ立てず、誇張せず、盛り上げずにいるのに、最初から最後までしつこいくらいどうしようもないほどの恋愛感情を訴えているの。
 

タイトルだってそうでしょう、まったく恋愛モノっぽくない

このタイトルをにこなりに解釈すると、普通の人として暮らしている生身の身体の、影の部分がプライベートな一面なの。そのプライベートな一面の裏側(奥深く)に消せないまま残っている相手を慕い続ける気持ち、それが影裏なのかなって。

 
あらすじは、主人公が職場の同僚と友達になって、釣りしたりお酒飲んだりとっても仲良しになるの。だけど友達は先にその職場を辞めてしまって、寂しいのなんのって…。しかも友達は新しい職場でしょーもない冠婚葬祭サービスを高齢者に半ば詐欺的に売りつけるノルマに縛られた営業マンやってるらしいっていうんだから心配にもなるわよね。そんな中あの震災が起きてふたりは・・・ってなカンジね。
 
なにがすごいって徹底して、徹底して、徹底して、L的ゲイ的教養のない人にはこれがゲイ男性の恋愛作品だってわからないようになってるってこと。


 

忍びスキルはセクマイ処世術


別にこの忍びスキルは、作者の沼田さんだけの技じゃないはずよ。
にこも含め、このサイトを見ているほとんどの人が、自分が何らかのマイノリティであることを、角が立たないようにそっと明かさず、かつ自分を偽らずに生きているじゃない?
 

たとえば、にこたちビアンであれば
「彼氏いるの?」
「付き合ってる人はいるよ~」
みたいなやんわりした訂正&自己主張ね。明かさず、偽らず
 
この忍びスキル、ほとんどのマイノリティが持ってるじゃない?当然の処世術というか。
 
『影裏』の忍びスキルがカンスト的にすごいのは、忍ばせていたマイノリティ設定がめっちゃ多いこと。
にこ、本文の3分の2を読み進めるまで、主人公が男性であることすら気付けなかったもん。一人称が「わたし」だったから。

主人公が男性だと明記されてから突然わかるのよね、この作品が丁寧に隠していたことは、全体を通して伝えられていたのは、切ない恋心だってことが!
 
元カレとして登場している人がいるってことは、主人公ゲイじゃん。ってことは、こんなに離れても、けなされても、相手が変わってしまったように思えても、その姿を探してしまう主人公のまなざしは・・・恋しかないじゃなーーーい!?
 
んもーっ!
めっちゃローテンションだからホントに気付かなかったわよーーー!なにこれ切なーい!
…ってなるのが『影裏』なのよ!
 

 

現代日本ならではのセクマイ文学作品


『影裏』は現代の日本のセクマイそのもの!
日本のセクマイって、活動をして政治を変えようという運動よりも、静かにオープンとクローズを使い分けて、セクマイであることを特権として使わずにフツーーーに生きてるじゃない?
 
セクマイ仕立てのストーリーは、悲劇、苦悩、差別、情熱的なセックスなんかがドラマチックに描かれがち。

そんなハイテンションについてけねー!ってこともあるじゃない?(笑)
この作品のローテンションっぷりは、現代日本だから生み出せた奇跡の冷静と情熱の間と言っても過言ではないわ。

 
ちなみに各選考委員の選評は
松浦理恵子「マイノリティ文学の秀作」
吉田修一「何か大きなもの」
川上未映子「名状しないちから」
綿谷りさ「書き手への信頼」
円城塔「プライバシーの守り方」
となっていて、全員褒め殺しよ!
 
 
ほらほら、気になってきたでしょ~。
読んでびっくり、盛り上がらず淡々とストーリーが進んでいくから(笑)でも、名状せず進んでいくストーリーを、書き手を信じて読んでみて。プライバシーを徹底して守ったマイノリティ文学として、何か大きなもの、そう、どうしようもない愛がそこには描かれているから。
 
 
はい、今回はここまで!ちょっと長くなっちゃった!
セクマイ文学が増えて嬉しい今日このごろにこ!
にっこにっこにーで次回もお楽しみにねー!
   
 

 

Writer's Info

にこちゃん


1989年生まれ

百合もレズも大好きな女好きのレズ。彼女大募集中!

この世の女の人全員幸せになりますようにと願ってやまない今日この頃。

 

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