24. Ashes To Ashes/デヴィッド・ボウイ

 

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24. Ashes To Ashes/デヴィッド・ボウイ

2018.03.11


 

こんにちは、マッキーです。

LGBT関連の洋楽アーティストのオススメ楽曲を紹介する『ゆらぎのシラベ♪』、第24回目です。

今回も引き続き、デヴィッド・ボウイです。『ロジャー』『スケアリー・モンスターズ』から、世界的な大ヒットとなった『レッツ・ダンス』に…行けたらいいな( ´∀`)。

 

ロジャー

 

まず、ベルリン三部作のトリを務めます『ロジャー』の1曲目である”Fantastic Voyage”をどうぞ。
 

 

ロマンティックで聴きやすいメロディの楽曲で、前作『ヒーローズ』や前々作『ロウ』には稀薄だった開放感を感じさせる曲ですが、この曲で大事なのはむしろ歌詞の切れ味が増していることです。ちょっと長くなりますが、歌詞はこんな感じです。約40年前の曲ですが、最近の世界情勢ともシンクロするような内容だと思います。

 

“万が一、この素晴らしい航海が崩壊に向かうなら これ以上僕らが年老いることもないだろう

でも忘れないでほしい 尊厳とは大事なものだが、我々の命も同様に大切なものだということを

我々は誰かの抑鬱と共に生きる事に慣れつつあるが 私は誰かの抑鬱と一緒に生きたくはない

まあ、何とかなるだろう たぶんだけれど とてもモダンな世界、でも完璧な人間なんていない 

世界は動いているけれど そんなのはミサイルを撃っていい理由にはならない

我々は父親のいない穀潰しみたいなもの それを肝に銘じておくことだ 

何故なら、我々はもうこれ以上 気の利いたことを口にするなんて出来ないのだから、そうだろう?

そして犯罪的なこの世界においては 間違った言葉につい踊らされることもある”

 

明らかにコカインの依存からくる誇大妄想の結果、ナチズムに傾倒した少し前の自分を断罪しているような歌詞なのですが、その意図は同じくこの”Red Sail”からも伝わってきます。ちょうど2分50秒ぐらいのところで、”Hinterland(=奥地)”という単語をワザとずらして歌うことで”Hitler(ヒトラー)”と聞こえるように仕込んでいるのに注目して下さい。
 

 

 

とまあ、『ロジャー』というアルバムは『ロウ』『ヒーローズ』を持ち上げるコアなファンからはすこぶる評判が悪いんですが、個人的には三本の指に入るぐらい好きな作品です。それはたぶん、「シリアスになりすぎること」の危険性をボウイ自身が他の誰よりも分かっていて、それ故にバランスを取るためにあえてセルフ・パロディのような作風にシフトしたことが窺えるからです。ボウイの表現のシリアスな面に強く魅きつけられたアーティストが3人も自殺している(カート・コバーン、イアン・カーティス、ビリー・マッケンジー)のは、けして偶然ではないというか。ニーチェの言葉に「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」というのがありますが、「深淵をのぞくこと」に伴うリスク管理の巧みさがボウイというアーティストの真骨頂だという気がします。

 

『ロジャー』の後、The Doorsも取り上げたことのあるドイツの作曲家クルト・ヴァイルの曲”Alabama Song”のカバーをシングルでリリース。クルト・ヴァイルの奥さんである舞台女優のロッテ・レーニャによるオリジナルとの比較をば。ベルリン三部作を経たからこそ出来る奇天烈なアレンジが見事です。
 

 

 

 

そして、満を持して1969年に彼自身が”Space Oddity”で産み落とした「トム少佐」のことを「あいつ(=これまでの自分)はただの頭のおかしいヤク中だ」と切って捨てた名曲、”Ashes To Ashes”が1980年にリリースされ全英1位となります。

 



 

スケアリー・モンスターズ


その直後にリリースされたアルバム『スケアリー・モンスターズ』は、70年代を通して彼が在籍していたRCAからの最後のアルバムであり、70年代の彼のキャリアを総括するような内容でした。このアルバムから”Heores”と非常に似た雰囲気を持ちつつもボーカルのアプローチは全く異なる曲”Teenage Wildlife”と、『ピンナップス』で2曲をカバーしていたThe Whoのピート・タウンゼントがギターで参加している”Because You’re Young”を。
 

 

 

 

さらに、このアルバムからの3rdシングルとして81年に全英20位となったタイトル曲と、おそらくこの曲にヒントを得て(というかあからさまに真似して)作られたであろうEcho & The Bunnymenの”The Cutter(83年に全英8位)”を。

 

 

 

と、70年代の求道者的なカルト・ロック・スターとしての活動に区切りを付けた後、83年の『レッツ・ダンス』からはメガ・ヒットを連発するポップ・スターへと転身するのですが、その直前に何をしていたのかというと…「舞台『エレファント・マン』に主演」「大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』に出演」「京都の飲み屋やカフェに出没して、地元民と交流を深める」の3つでした。まず最初の『エレファント・マン』についてですが、デヴィッド・リンチ監督でアンソニー・ホプキンス出演、アカデミー賞にもノミネートされた同名映画のもととなった戯曲の舞台版です。日本で上演された際には市村正親や藤原竜也が主演を務めています。

 

あらすじはプロテウス症候群という、極度の骨格の歪みや皮膚の変形を伴う病に冒されたジョゼフ・メリックという実在の人物の数奇な人生を扱ったストーリーです。ウィキペディアにあったご本人の記事と、ボウイの舞台の動画を貼っておきます。

 


 

Forbidden Colours


で、『戦場のメリークリスマス』はご存知の方も多いと思いますが、坂本龍一演じる日本兵のヨノイ大尉とボウイ演じるイギリス人俘虜のジャック・セリアズ少佐の間の、極限状況における究極のブロマンスを描いた(?)作品と言っていいのかな、という。ビートたけし演じるハラ軍曹がいい味出してます。あと劇中セリアズ少佐の回想シーンで、身体的な障害を持った弟とのギクシャクした関係性が描かれるんですが、ボウイはそこに「兵役のために統合失調症を患った異父兄テリーと自分の関係性」を重ねてみていたようです(その辺の話はこちらの記事を参照のこと)。では、坂本龍一と元JapanのDavid Sylvianによるこの映画の主題歌”Forbidden Colours”をどうぞ。

 

 

”Forbidden Colours”=「禁じられた色彩」な訳ですが、今回この記事を書くにあたって色々と調べる中で一番驚いたのは、坂本龍一の父である文芸編集者の坂本亀一が三島由紀夫の『禁色』および『仮面の告白』を担当していたことでした。かつ、デヴィッド・シルヴィアンは三島のファンでもあり『禁色』を愛読していたとのこと。ちなみに、ボウイ自身はこの”Forbidden Colurs”について、「ボーカルはない方がいいねw」とコメントしていたそうです。デビシル可哀想。じゃあ、ということで坂本龍一によるピアノ・インスト版を。

 

 

最後に「京都に出没〜」についてですが、どうやら京都在住のデヴィッド・キッド氏という東洋美術の研究家と懇意だったらしく、度々彼のお宅に遊びに来ては京都市内をブラブラしていたとのこと。ある時はディスコでナンパしたり、またある時は商店街で鰻を買ったり。はたまた京都市役所の近くの喫茶店で見ず知らずの女子高生の英語の宿題を手伝ったり、出町柳周辺の飲み屋でたまたま話しかけてきた京大生相手に「アメリカのレコード会社から巨額のオファーが来ているのだが、受けるかどうか迷っているんだ」とお悩み相談したり。私が京大に通い始めたのがちょうど1990年だったので・・・・・・・チクショウ、あと10年早く生まれていれば、って感じですね(´ω`)。

シメにボウイの京都時代を象徴する画像を紹介してお別れしましょう。阪急電車の前でポーズを取ってこんなにカッコ良く決まる人を他に知らない。では。



history image Twitterより引用
 

 

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マッキー

生まれは京都。でも魂のふるさとはイギリス北部(たぶん)。
渚カヲルに似てると言われたことがある。「歌はいいねえ。」

 

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マッキー

ゆらぎのシラベ♪

生まれは京都。でも魂のふるさとはイギリス北部(たぶん)。渚カヲルに似てると言われたことがある。「歌はいいねえ。」

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