16. The Crying Game/ボーイ・ジョージ

 

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16. The Crying Game/ボーイ・ジョージ

2018.02.11



こんにちは、マッキーです。

LGBT関連の洋楽アーティストのオススメ楽曲を紹介する『ゆらぎのシラベ♪』、第16回目です。

今回は前回に引き続き、Culture Club/Boy Georgeを取り上げたいと思います。

 

さて、前回はカルチャー・クラブの2ndアルバムからヒットした3曲を中心に取り上げました。で、その続きをば。1984年の3rdアルバム『Waking Up With The House On Fire』からは辛うじて”The War Song”が全英2位、全米17位となるもその後のシングルが不発(“The Medal Song”が全英32位、”Mistake No.3”が全米33位)。続く4thアルバム『From Luxury To Heartache』ではプロデューサーの交替などもあり、かなりエレクトロ・ポップ寄りの音にシフト。1stシングルの”Move Away”はそこそこヒット(86年に全英7位・全米12位)。しかし2ndシングルの”God Thank You Woman”は全英31位止まり(アメリカではリリースされず)。そしてその年の7月には遂に…ボーイ・ジョージがヘロイン所持の容疑で逮捕、バンドは活動休止に追い込まれます。



 

God Thank You Woman

 

という事で、ジョージが逮捕される2ヶ月前にシングル・リリースされた”God Thank You Woman”のPVを。個人的にはすごく良く出来たゴスペル・エレポップだと思うんですが、如何せん歌詞の白々しさが…この人が「女性は素晴らしい!」なんて歌っててもウソ丸出しやん、と。

 

 

この時は初犯ということもあり執行猶予付きですぐに釈放され、翌87年には初のソロ・アルバム『Sold』をリリース。1stシングルの”Everything I Own”は全英で1位に。


 

Keep Me In Mind



私のお気に入りは、2ndシングルで全英では29位止まりでしたがイタリアで3位という、不思議な売れ方をした”Keep Me In Mind”です。

 

 

“これから先、一生私のことを忘れないでね  だってたぶん、二度目はないかも知れないから”という、「行きずりの恋/情事」を歌った曲なんですが、不思議とウェットではないというか”風通しの良さ”を感じる曲なんですよね。もしかするとこの人の曲の中で一番好きかも知れない(Culture Club時代を含めて)。



 

No Clause 28

 

1988年には、イギリスの地方議会で施行された”公の場での同性愛の喧伝を禁じる”条項であるセクション28に抗議の意を込めた”No Clause 28(全英57位)”をリリース。Pascal Gabrielによるリミックス・バージョンのPVをどうぞ。

 

 

バリバリのハウスですね。88年にこれをやれたのはひとえに彼がソロになっていたことと、クラブ・カルチャー(カルチャー・クラブではなく(^_^))との結び付きを失っていなかったことに尽きると思います。


 

Don’t Take My Mind On A Trip



とは言え、なかなかソロとしての方向性は定まらず、89年には当時アメリカで流行していたニュー・ジャック・スウィングに挑戦。ボビー・ブラウン等を手掛けて波に乗っていたTeddy Rileyのプロデュースによる”Don’t Take My Mind On A Trip(全英68位)”を。

 


 

個人的には、彼の中性的な声とR&B色の強い楽曲/アレンジとのミスマッチが面白いと思うんですが、まあ「浮いて」ますよね、どう見ても。というか、「色んなスタイルの音楽性を節操なく食い散らかしてる」印象が強いです、彼のソロ時代は。それでも歌が上手いから何となく”聴けて”しまうんですが。



 

Bow Down Mister

 

1991年には”Jesus Loves You”名義でアルバム『The Martyr Mantras』をリリース。ここからは”Bow Down Mister(全英27位)”がオーストリアで2位・ドイツで6位という、これまた不思議な売れ方をしたんですが、正直あんまり音楽的には面白くない。

 



 

The Crying Game

 

ところが翌92年には映画『クライング・ゲーム』のサントラの主題歌として、ペット・ショップ・ボーイズのプロデュースによる”The Crying Game”が全米15位という、久々のアメリカでのヒットに。もちろん、PSBのニール・テナントのバック・ボーカル付きです(ここだけの話、ニール・テナントは結構な”歌いたがり”です(⌒-⌒))。
 

 

 

映画自体の話をすると壮大なネタバレになるので避けますが、LGBTに関心のある人/当事者なら一度は観ておいて欲しい作品です。アカデミー脚本賞も受賞しました。主人公はIRA(英国からのアイルランドの独立を求める武装組織)のテロリストなんですが、ここでボーイ・ジョージのルーツがアイリッシュだというのが利いてくるんですね。それに加えてカムアウト済みのゲイであることも。後は…映画を観てのお楽しみ、ということで。楽曲に関しては、ボーイ・ジョージの声の持つ”儚さ”を最大限に活かした絶妙なプロダクションだと思います。流石はPSB。ヒットのツボを心得てらっしゃるな、というお仕事です。



 

Same Thing In Reverse

  

1995年にはアルバム『Cheapness And Beauty』をリリース。ここからの”Same Thing In Reverse(全英56位)”では、これまでになくアイリッシュ・トラッド寄りの楽曲に乗せて「恐れを檻に閉じ込めて、”カミカゼ・クイアー”となるのだ」と、物凄い檄を飛ばしています。なんか、三島由紀夫みたいですね(@~▽ ~@)。ちなみに、同年『Take It Like A Men』という自伝を出版。その中で元カレであるカーク・ブランドン(元Theater Of HateおよびSpear Of Destinyのボーカル/ギター)との交際について暴露&アウティング。挙句にその本人に訴えられますが、この時はボーイ・ジョージが勝訴。敗訴したカーク・ブランドンは裁判の費用を支払えずに破産。何とボーイ・ジョージがそれを肩代わりして2万ポンドを払ってあげたそうです。気前のいい話だなあ(^▽^)/。
 

 

 

さて、1998年には満を持してカルチャー・クラブを再結成。シングル”I Just Wanna Be Loved(全英4位)”およびアルバム『Don’t Mind If I Do』をリリース。”Do You Really Want To Hurt Me”を彷彿とさせるメロウなレゲエ/ラヴァーズ・ロック路線への回帰は昔からのファンを喜ばせました。

 

 

何と言うか、「レゲエ・シーンおよびジャマイカという国におけるLGBT差別」についてはそのテーマだけで一冊本が書けるくらい根の深い問題らしいです。が、ここではそれらを踏まえた上で、”ボーイ・ジョージのようなシンガーがレゲエ調の曲で友愛について歌うこと自体が、一つの「プロテスト」として成立する”事実を指摘する程度にとどめておきます。このトピックに興味のある方は、こちらの記事こちらなどをご参照下さい。2007年の記事ですので、現在の状況とは少しそぐわない部分があるかも知れません。

 

で、せっかく再結成したにもかかわらず2000年には再び活動を停止。理由は”ボーイ・ジョージのクラブDJとしての仕事が忙しくなったから”だそうです。他のメンバーにとってはたまったもんじゃないですね。

 

その後、ボーイ・ジョージは2005年にはコカイン所持および虚偽通報の罪で二度目の逮捕何でも、酔っぱらって「泥棒に入られた!」と警察に通報して、で警察が来たら「何か用?」と(覚えていない(ノ゚ο゚)ノ)。

そのまま家の中を捜索されてコカインが見つかったので逮捕と。まるでコントみたいな話ですね。そして2007年に出会い系サイトで知り合ったノルウェー人男性を自宅に監禁、手錠をはめて鎖で殴ったとして2009年に禁固15ヶ月の実刑判決が下ります(が、ムショの中での態度が勤勉だったため4ヶ月で出所)。ちなみに、この逮捕によって2008年に予定されていたアメリカでのツアーは全てキャンセル、と。

 

で、思い出して欲しいんですが前回はじめに紹介した”Do You Really Want To Hurt Me”のPVで、独房にブチ込まれたボーイ・ジョージを外に出してくれたのは”3人のソウル・シスター達”でしたよね。…これって、”仏の顔も三度まで”っていうことじゃないですか?つまり、”次逮捕されたらアウトだよ”みたいな。すごいなあ。見事に三回逮捕されてるもんなあ。



 

Karma Chameleon

 

あ、一応その後2010年には『Ordinary Alien』、2013年には『This Is What I Do』をソロでリリース。2014年にはカルチャー・クラブを再々結成して各国をツアー、2016には16年ぶりの来日公演も行われました。ということで、最後は2017年のウェンブリー・アリーナでの”Karma Chameleon”のパフォーマンスを。

 

 

いやあ、「毎日がサバイバル」ってシャレになってないじゃん!って。正にカメレオンのように表情をコロコロ変える”カルマ(=業、仏教用語で物事の因果や自分の行いに対する報いのこと)”に翻弄されつつ、でもちゃっかり生き残ってるのがすごい。ジョージ・マイケルやビリー・マッケンジーを取り上げた後だけに。こういう感じがいいのかも知れない。うん、この記事書いたことでこの人に対する見方が変わりました。ちょっと真似してみよう。

 

次回はたぶん、”一昨年に亡くなったけどお金が一銭も残ってなくて葬式代が出せない、と聞いてボーイ・ジョージがその葬式代を払ってあげた”アーティストになると思います。これもまた一つの”カルマ”かな、と。では。

 

 

 
Writer's Info

マッキー

生まれは京都。でも魂のふるさとはイギリス北部(たぶん)。
渚カヲルに似てると言われたことがある。「歌はいいねえ。」

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マッキー

ゆらぎのシラベ♪

生まれは京都。でも魂のふるさとはイギリス北部(たぶん)。渚カヲルに似てると言われたことがある。「歌はいいねえ。」

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