12. This Town Ain’t Big Enough For Both Of Us/スパークス

 

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12. This Town Ain’t Big Enough For Both Of Us/スパークス

2018.01.28


 


こんにちは、マッキーです。
LGBT関連の洋楽アーティストのオススメ楽曲を紹介する『ゆらぎのシラベ♪』、第12回目です。

前回は図らずもジョン・レノンを取り上げましたが、その流れでThe Beatlesを…とは行かないのが世の常でございます。というのも、自分の好きなビートルズの曲が悉くポール・マッカートニーの曲だという。一応列挙しますと、”You Won’t See Me””Lady Madonna”、”Let It Be”、”Blackbird”、”Oh! Darling”、”Got To Get You Into My Life”と、見事に全部ポールの曲です。さあ、どうしよう…と考えていたところ、「そうだ。ポールのソロの曲のPVにあいつが出てたじゃないか!」と思い至りまして。なので、今回はそのPVに出てくるチョビ髭のキーボードの男とその弟による二人組、スパークスを取り上げます。
 


 

This Town Ain’t Big Enough For Both Of Us


まずはその曲、Paul McCartneyの”Coming Up”のPVから。

 
 

はい。確かにチョビ髭にオールバックという、極めて個性的な風貌のキーボーディストが出て来ます。とは言え、実はこれ「(スパークスの)ロン・メイルそっくりに変装したポール・マッカートニー本人」なんですが。ついさっきウィキペディアでそれを知ってびっくりしました。だってこの20年間ずっと「どうしてP・マッカートニーのビデオにスパークス(兄)が出てるんだろう?」って不思議に思ってたんですから。まさかポールの扮装だったとは。

でもそのコスプレのおかげで、どマイナーなスパークスを取り上げるきっかけが出来たことには素直に感謝しましょう。ポール、ありがとう(^▽^)。
 
では、彼らの代表曲にして1974年に全英2位になった最大のヒット曲、”This Town Ain’t Big Enough For Both Of Us”のPVをどうぞ。

 
 

はい、いかがでしょうか?何と言うか、”度肝を抜かれる”という言葉がぴったりくるような曲だと思います。ボーカルのラッセル(弟)は目がイっちゃってるし、ロン(兄)は明らかに”変な人”だし。それではアーティスト紹介をば。



 

The Sparks / アーティスト紹介

 

1968年にアメリカのロサンゼルスにて結成。メンバーは1945年生まれの兄ロンと1948年生まれの弟ラッセルのメイル兄弟(一時期5人編成だったこともある)。結成当初は「ハーフネルソン」という名前で活動していたが、1972年に「スパークス」に改名。アメリカ出身のバンドであるが本国では全く人気が出ず、2ndアルバム発表後に活動拠点をイギリスに移す。それ以降、先述の”This Town...”および3rdアルバム『Kimono My House』がUKで大ブレイク。その後もグラム・ロックからパワー・ポップ、エレクトロ・ポップからクラシカルなバロック・ポップへと、音楽性をコロコロ変えながらも現在に至るまでカルト的な人気を集め続ける。最近ではFranz Ferdinandと電撃的に”合体”、2015年にアルバム『F.F.S』をリリースしたりしている。

 

と。おそらくこれまでこの記事で取り上げたアーティストの中で、一番マニアックかつ日本での知名度が低いバンドなのでは、と思います。それ以前に、このスパークスをLGBTアーティストとして取り上げていいのか、という疑問もあるのですが。というのも、2008年のTimes Onlineでのインタビューで「我々はゲイではないよ。少なくとも我々の知る限りではね!ハハハハッ」と答えているからです。と同時に「それを言うと誰もが驚くんだけどね。というのも、我々と関わりのあるアーティストの多くはゲイだと思われているから」とのこと。

 

これをどう解釈すべきか、という話なんですが……例えばクイーンのフレディ・マーキュリーはスパークスの大ファンで、デビュー間もない時期にクイーンがスパークスの前座(!)をやっていた経験から、ラッセルのファルセットを多用するボーカル・スタイルを真似するようになった、と言われています。

また、モリッシーもスパークスのファンであることを公言していて、The Smithsとしてデビューする前にイギリスの音楽誌に『Kimono My House』を絶賛するレビューを投稿したり、自身がキュレーターを務めた2004年のメルトダウン・フェスにスパークスを招待したり(そのお返しに、スパークスは彼のソロ・デビュー曲の”Suedehead”の2006年版リミックスを担当したり、2008年のアルバム『Exotic Creatures Of The Deep』に”Lighten Up, Morrissey(直訳:元気出して、モリッシー)”という曲を収録したり)。

 

あるいは、彼らが自分達の代表曲をセルフカバーしたアルバム『Plagiarism』では、まずジャケ写がこんなので。

 
 

かつ、『Kimono My House』からの2ndシングルとして全英7位になった”Amateur Hour”のリメイクではErasureを起用したり。オリジナルとリメイクを聴き較べてみましょう。
 

 

 

 

 

さらに、1979年にジョルジオ・モロダーのプロデュースで全英14位になった”The Number One Song In Heaven”を、Jimmy Somervilleとのデュエットとしてリメイクしたり。
 

 


 

 

 

 

ちなみにこの曲のオリジナル・バージョンはイアン・カーティス(1980年に自殺したJoy Divisionのボーカル。彼の死後、残されたメンバー3人はGillian Gilbertを加えNew Orderとして再出発)のお気に入りとしても有名で、New OrderのボーカルBernard Sumner曰く、「彼が進むべき道を指し示してくれたんだろうね。いつも楽屋で”これを聴け”ってクラフトワークやスパークスをかけてたから」とのこと。
 

ちなみにニュー・オーダーの曲で一番その辺りの影響が感じられるのはたぶん、この”Temptation”だと思います。彼らの曲の中で一番好き、というか自分の葬式でかけて欲しいくらい好きな、87年再録音バージョンを。

 

 

 

結局、「ゲイとかヘテロとかバイとか、既存のカテゴリーに当てはめることでその個人やアーティストを理解したつもりになる」という世間一般の人々が無意識のうちに行っている行為に対して、”私達はそんな暴力的なコミュニケーションの犠牲になるつもりはない”という異議申し立てとして、スパークスの音楽やパフォーマンスは機能しているのかなと思います。それもシリアスになるのではなく、あくまでも常に諧謔心をもって。

 

ちなみに、”This Town Ain’t Big Enough For Both Of Us”の歌詞では、所謂普通のヘテロ男性が”SHE”や”HER”に対して性的興奮を覚えたり、彼氏彼女の関係に持ち込もうと努力する様を描写した後で、

 

“この街は俺とアンタが共存できるほどデカくない で、俺の方は出て行くつもりなんて更々ない”

 

と。つまり「(ヘテロではない男性の立場から、ヘテロ男性全員に対して)この街から出て行け!!」と宣告する歌だという。…それを踏まえた上での、先程の「我々はゲイではないよ、ハハハハ♪」発言だということですね。あ、今気付いたけど「ゲイじゃない」とは言ってても「バイじゃない」とは言ってないんですね(*^-^*)。そういう事か。

 

最後に。1974年にアルバム『Propaganda』からの1stシングルで全英13位という小ヒットにもかかわらず、非常に多くのアーティストにカバーされている”Never Turn Your Back On Mother Earth”を。この曲の歌詞も「既にパートナー(おそらく同性の)がいる男性が、一時的に”SHE”と浮気してしまうんだけども、結局元のパートナーのところに帰ってきて”もう(女性とは)浮気しないよ”と誓う」というストーリーで。正に「ゆらぎ」について歌っているなあ、と。彼ら自身のオリジナルと、Depeche Modeのマーティン・ゴアによるカバー・バージョンで。では。
 

 

 

 

 

 
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マッキー

生まれは京都。でも魂のふるさとはイギリス北部(たぶん)。
渚カヲルに似てると言われたことがある。「歌はいいねえ。」

   

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マッキー

ゆらぎのシラベ♪

生まれは京都。でも魂のふるさとはイギリス北部(たぶん)。渚カヲルに似てると言われたことがある。「歌はいいねえ。」

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