映画『レディ・ガイ』――人の性別を勝手に変えてはいけない

 

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映画『レディ・ガイ』――人の性別を勝手に変えてはいけない

2018.01.12

 
© 2016 SBS FILMS All Rights Reserved


『否定と肯定』『希望のかなた』『花筐/HANAGATAMI』と、最近シリアスなトーンでお届けすることの多かったマイノリティ・シネマ・リポート。今回はすこしハメを外して、元気な作品をご紹介したいと思います。それが現在公開中の映画『レディ・ガイ』です。

ミシェル・ロドリゲス、男になる

これまで『アトミック・ブロンド』ではシャーリーズ・セロンを、『キャロル』ではケイト・ブランシェットを、ハリウッドの「抱かれたい女優」ナンバーワンだと申し上げてまいりましたが、もう一人ナンバーワンがいました。ミシェル・ロドリゲスです。『ワイルド・スピード』シリーズで有名な彼女、そのあまりに男前な顔つきと役どころがつねに、特定の層にいる観客の心をわしづかみにしてきました。
 
男前すぎる女優ミシェル・ロドリゲスが、実際に男だったら……? そんな最高な発想を実現してしまった夢みたいな映画、それが『レディ・ガイ』なのです!
 
何よりもまずは予告編をご覧ください。
 
 
 
 
凄腕の殺し屋フランク・キッチン(ミシェル・ロドリゲス)はある日、仕事を依頼してきたマフィアから逆に暴行を受け、意識を失ってしまう。数日後、目を覚ました彼は身体の異変に気づく。なんとフランクは、マッドな整形外科医(シガニー・ウィーバー)によって無理やり性転換手術を施されていたのだった! 女になってしまった殺し屋フランクの復讐が今、始まる……!
 
と、ざっくりあらすじを書いたところで自分でも「???」となってしまっていますが、本当にこういうストーリーなんだからしょうがないです。ミシェル・ロドリゲスが無理やり女にされて(もともと女なんですが)、しかもその手術をしたのがシガニー・ウィーバーという、字面だけで頭がクラクラしてくるような展開。こんなの見るに決まってるじゃないですか。

 
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こんなワクワクするような(でも普通だったらぜったい妄想で終わってしまうであろう)企画を見事に映画化してみせたのはウォルター・ヒル監督。『ザ・ドライバー』や『ストリート・オブ・ファイヤー』など、男臭いアクション映画の数々で知られるベテラン中のベテランです。御年76歳(1月10日が誕生日だったみたいです)にして『レディ・ガイ』を撮り上げました。「何やってんだ!」「ありがとう!」の思いが同時にこみ上げます。

ミシェル・ロドリゲス・パラドクス

さて『レディ・ガイ』、一番の見どころは何といってもやはり、ミシェル・ロドリゲスの変貌ぶりと体当たりの演技でしょう。

 
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女に変えられる(元のミシェル・ロドリゲスに戻る)までのあいだはもちろん男としてスクリーンに登場するのですが、その時間が意外と長く、ミシェル・ロドリゲスの「男装」をしっかりと堪能させてくれます。彼女は2つの大きな要素によって、男を演じています。それはずばり、。男時代のミシェル・ロドリゲスは髭をたっぷりと蓄えており、そして(特殊メイクによって)鼻が大きくなっています。これだけで「ハイ、男です」と提示されるわけです。シンプル!
 
で、問題は、その「男装」があまりにシンプルすぎるせいか、ミシェル・ロドリゲスが全然男に見えないんです! ただ「男装をしたミシェル・ロドリゲス」にしか見えない。これは不思議なことですよ。だってほかの映画に出ているミシェル・ロドリゲスは男と見まがうばかりの男前なのに、いざ男装をすると、これがちっとも男に見えないんだから。突然つきつけられた逆説的な命題に、なんだか狐につままれたような気持ちになってしまいます。

 
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ただ、1シーンだけ「男装」がしっかりと作り込んである箇所があります。それが、男時代のミシェル・ロドリゲスが全裸になるシーンです。このシーンでは筋骨隆々な体つきはもちろんのこと、ごていねいなことに男性器まで再現されており、しっかりと画面に映るんですね。しかもデカい! もともと巨根なイメージのあったミシェル・ロドリゲスですが(?)、我々の勝手な想像がついに具現化してしまいました。ミシェル・ロドリゲスのチンコが拝めるのは『レディ・ガイ』だけ!

意外と真面目な側面も…

『レディ・ガイ』につけられた日本語の宣伝文句は「女に改造されても、弾丸(タマ)はある」。もうこれしかないだろう、といわんばかりの勢いがあって良いです。この惹句が象徴するように『レディ・ガイ』は突飛な「出オチ感」をたたえた映画ですが、しかし、意外に真面目な側面も持っています。それは、性別違和を大きな苦痛として描いているところです。
 
ミシェル・ロドリゲス演じる主人公フランクは、みずからの意思に反して女性に改造されてしまいます。とはいえ、その結果として完成した姿は元のミシェル・ロドリゲス、つまり見た目はハリウッド女優になったわけです。この展開、ともすれば観客に「えっ、むしろ良かったんじゃない?」という印象を持たせかねない。
 
しかし当のフランクはそれを良しとしません。いくら美人になっても中身は男性であり、殺し屋フランク・キッチンのままであるということを、『レディ・ガイ』はきちんと描いています。体の性別は変えられても、暴力に生きるしかない彼の本性まで変えることはできなかったのです。そういう意味ではこの「女に改造されても、弾丸(タマ)はある。」というキャッチコピーは、意外なほど核心に迫っているといえるかもしれません。

 
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話の運びとしてはけっこう単調な反復が多く、アクションも最近の有名作に比べればずいぶん地味なこの映画。でもそんなことはどうでもいいんです。ミシェル・ロドリゲスが男になるというアイデアを実現してくれただけで、お金を払う価値は十二分にあります。女にされたミシェル・ロドリゲス(いや、だからもともと女なんですが)が自分の裸体を鏡で見て、乳房を自分でつかむシーン。もしもウォルター・ヒルが『君の名は。』を撮ったら?  の答えがここにあります。ぜひ劇場でご覧ください。

 

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WRITERこの記事の投稿者

レインボーライフ映画部


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