第28話:ラベルはいつ誰が何を借りて返しても良い

 

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2018.11.09
「男だとも女だとも思わない、ただしどう見ても女にしか見えないし女に見えないように努力するわけでもない、ああ俺って本当に中途半端」

自分のことをXジェンダーだと言うようになってから5年以上経つが、今でもたまにそう思うときがある。



Xジェンダーという言葉に帰属意識をもつようになったのは、20歳まで1年を切ったころの、大学のジェンダー論の授業がきっかけだった。

教授が「性別はグラデーション」だと教えてくれた。
教科書には男と女できっぱり分けられたグループではなく帯の図があり、両端に男女と書かれていた。



実のところ感覚ベースではどこかで何となく分かっていた、分かっていたはずなのに、男女二元論の構造が根強い社会で生きづらさをもっていることに気付いてしまったら、本当に生きづらくなってしまうと思ってその感覚に蓋をしていたからなのか、改めて他者にそう断言され、自分の感覚が顕在化したことが、衝撃だった。



大学で一番大きい講義室の教養の授業で、楽単と言われる授業を受ける多くの学生の一人にすぎなかったけれど、その授業でその後の私の人生は、結構大きく変わった、と思う。

その授業をとっていなかったら、その授業を何かしらの理由で休んでいたら、私はもしかしたら今でもXジェンダーという言葉を知らないで、自分はなり損ないの女の皮を被ったホモサピエンスと自認して生きていたかもしれない。

とりあえず本当に結構な衝撃だったので、その授業の感想のメモには「すごく共感した」「自分は真ん中辺りにいるのだと思う」などと教授への感謝の言葉も添えて提出した、ような気がする。



そのあと、周囲の同学年の友人より何年か遅い「性の目覚め」に刮目した自分は、やっと自分で自分を「正式に」セクシャルマイノリティだと受け止め始め、ネットで色々調べるようになり、「自分にはそもそも性自認とかいうものが、色々あるジェンダーのラベルに帰属意識が向かないみたいで、それをXジェンダーというならまあそうかもしれない」という感覚に辿り着き、今に至る。




社会人になってからは、意外とサークル活動に明け暮れていた大学生時代よりも休みになると暇だったので、いよいよセクシャルマイノリティのオフ会やイベントにあちこち繰り出すようになった。



そこでは、「Xジェンダーらしさ」なんてないことは分かっているはずなのに、でもやっぱり俺の目からすると短髪で胸が目立たないメンズ服を着る女体もちのXや、レディース服を着てメイクして会社に怒られるギリギリまで髪を伸ばす男体もちのXが、なんだか多い気がして、それなのにわしはこんなんでいいのだろうか、と少しだけ思った。

女体もちでワンピースを着ていてもそもそもファッションに対してあまり興味がないから特に何とも思わない自分、筋肉をつけないで脂肪多めで体のラインが直線的ではないけどもやっぱりご飯はいつもおいしいし週1、2杯は食べるラーメンはこってり系の方が多いし運動は嫌いだから体を鍛える気にならない自分、男性アイドルのファンを辞める気配など微塵もなくむしろ年々底なし沼に深く深くハマり続けている自分は、この目の前にいらっしゃる努力を欠かさないXの人たちの前で、自分はXだなんて言えないかもと、本当に少しだけだけど、感じざるを得なかった。

勿論、みんないい人だし、Xってのはそもそも既存の男女二元論から離れた枠組みだから、「そういう服も着られるんですね」(ここでの「着られる」は、きっと尊敬語ではなくて可能の意)とは言われたとしても、「そんなナリでFtXだって言っても説得力ないですよ」などとは、絶対に誰にも言われないけども。



話は少し変わって、どうもXの人はXへの帰属意識が、そもそも薄いように思う。
私自身も他に当てはまる物がないからこれかな、と流れ着いたにすぎないし、少し前には「Xジェンダー」から離れて「ノンバイナリー」に移行する動きもあったし、「他にいい物件があったからそっちに引っ越しますわ」といった感じなのだろう、と認識している。

良いことだと思う。
引っ越し自体が面倒でさえなければ、今よりいい物件があったら、引っ越したいと思って当然だろう。



ところで、さっきから「帰属意識」とかそれっぽい言葉を使っているが、そもそも「帰属意識」とは何だろうとふと考えた。
そこで「帰属」を調べてみる。
 

きぞく【帰属】
[名・自サ変]

(1) 特定の国や団体に属し、それに従うこと。
(2) 財産・権利・領土などが特定の人・団体・国などに属し、その所有となること。

(大修館書店、明鏡国語事典MX、(c) KITAHARA Yasuo and Taishukan, 2008-2011)


なるほど。そうですか。

ところで、その「従う」って何?????

男に帰属意識をもつなら男らしく、女に帰属意識をもつなら女らしく、Xジェンダーに帰属意識をもつなら「Xジェンダーらしく」従えっての?

そんなのまっぴらご免だ!少なくとも俺は!



そんなに「ラベル」に気を背負わないでいたい。
別にみんなも、誰も背負う必要はない。
今日はこのラベル、明日はそっちのラベル、明後日は何もなし、でもいいじゃない。
役職じゃあるまいし、「○○大使」とかじゃあるまいし。



でも、積極的に業の如く背負う人もいるし、背負わせたがる人もいる……んだろうと思う。
背負いたければ背負えばいいと思う。
そんなに背負って、随分元気ですね、精が出ますね、って。

でも、みんな常にしっかり背負いたいわけではないので、そこはご理解いただきたい。



ラベルを借りて名乗りたい人が名乗ればいい。
ラベルは返したいときには謹んで返却すればいい。また借りてもいい。
ただ、名乗るための「資格」は要らない。

強いて必要な「資格」と言えば、そのラベルに誇りをもつことと、他のラベルも尊重することかしら。

 

WRITERこの記事の投稿者

Jitian

隣の凡人X~セクマイですが何か~

Xジェンダー、パンセクシャル。常駐しているTwitterと気が向いたら書いているブログもよろしくお願いします!

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