海外文学 サイモン vs 人類平等化計画(2/2)

 

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海外文学 サイモン vs 人類平等化計画(2/2)

2018.09.04
 

ゲイが読んでみた感想(一部ネタバレを含みます)

 
本書を読んでみた率直な感想としては、ゲイが登場する云々を抜きにしても、山あり谷ありのストーリー展開で読んでいてワクワクするということです。
 
主人公のサイモンはネットで知り合った同じ高校に通うメル友の「ブルー」にだけは自身がゲイであることを素直に打ち明けることができ、メールを通じて恋愛感情のようなものを育んでいきます。そんなメール相手の「ブルー」の正体は一体誰なのか、それを推理しながら読んでいくとおもしろいです。最後にはちょっとした伏線も回収されるので、読後感はすっきり爽やかな気分になることができました
 
 
この小説はゲイである「サイモン」にフォーカスして話が展開していくことはもちろんなのですが、サイモンの周囲にいるサブキャラたちもそれぞれ個性的で思わず注目してしまいます。
 
かわいくて性格も良い女の子「アビー」、アビーのことが好きで恐喝まがいのことをしてしまう「マーティン」、BLが好きな親友の「リア」などなど、サブキャラたちの設定も細かく丁寧に書かれており、それぞれの立場から見るゲイ(サイモン)への視点も興味深いです。たくさんのキャラクターが登場するので、きっとお気に入りのキャラを見つけることができると思います。
 

 


 

この作品をゲイが読むと、「もしゲイということがばれてしまったら、周囲にバカにされたりいじめられたりするのではないか」といったアウティングの恐怖をまざまざと感じさせられてしまう節もなくはないのかなと感じます。特に後半部分で、ゲイであることをネット上に拡散されてしまうところは読んでいて胸が痛くなりました。
 
ゲイというだけでいわれのない差別や偏見を受けるということは、認めたくありませんが、まだまだ当然のように世間一般に蔓延っている事実です
そんなゲイにとって厳しい社会の中で強く生きていくために、ゲイであることとどう向き合っていくのか、本書は若い世代にそれらを考えるきっかけを与えてくれます。
 
 
ゲイであることに悩むサイモンの心の支えとなっているのはノンケの友人、家族、そして同じ境遇にあるゲイのメル友「ブルー」です。
 
ゲイであることをノンケの友人や家族にカミングアウトするまでは、「ブルー」とのメールのやりとりがサイモンの心に大きな安心感を与えてくれました。ぼくも思春期の頃はネット上で自分と同じ性指向のゲイの存在を知ることができただけでひどく安心したものです。
 
 
もしゲイであることをまだ周囲に打ち明けられず、一人で悩んでいる人がいるのなら、まずはネット上でもいいので、自分の同じような考え方をしている人を探すことから始めることをおすすめします。

世界のどこかには自分と似たような悩みや不安を抱えた人がいて、その悩みを払拭して幸福をつかみ取った経験を持つ人が必ず存在しているとぼくは思います。そんな自分と似たような悩みを抱える人と、直接の面識はなくてもネット上で心の繋がりを持つことができたら十分ステキじゃないですか?
 
ぼくはゲイの中でもマイノリティな方だと思いますが、自分の考えに共感してくれる人ともネットのやりとりを通じて繋がることができました。この連載記事も誰かの心の琴線に触れ、誰かの不安や悩みを軽くするために一役買ってくれていたらうれしいです。
 

 

次回のゲイの図書館は…?


次回は“同性愛とキリスト教”をテーマにした本をご紹介したいと思います。
 
 
みなさまはキリスト教が同性愛に対してどのような扱いをしているかご存知でしょうか?
 
ぼくは宗教に関しての見識がほとんどないので主観的な意見となってしまうのですが、これまでキリスト教は同性愛について厳しい処罰をしている宗教なのではないかと思っていました
 
その理由として、以前の記事でも少し取り上げたのですが、日本の男色文化が廃れてしまった一因に西洋キリスト教文化のホモフォビア思想が関係しているということが挙げられます。キリスト教信者は同性愛への理解が足りないというか、むしろ同性愛に対して嫌悪感を強く抱いているのではないかと感じられる節もあり、そのため日本で同性婚の合法化が進まないのはキリスト教的な思想が障害となっているのではないかというところでも問題になったりしていますよね。
 
 
―― しかし、実際のところはどうなのでしょうか?
 
世界の約3割の人たちがキリスト教の信者とされており、当然ながらその中に多くのゲイ・レズビアンが含まれています。彼ら、彼女らはクリスチャンでありつつ、どのように同性愛者としての自分のアイデンティティを認めているのか非常に興味深いです。
 
宗教による障壁がありつつも、それを乗り越えて自己肯定するための思考法は、どのような立場にいるゲイ・レズビアンにとっても参考になる考え方なのではないかと思います。
 
 
宗教について語るのはなんとなくタブーな感じがしますよね。しかし、ぼくは本の紹介という形を通じて“同性愛とキリスト教”について自分の考えをまとめ、みなさまに発信したいなと思っています。
 
次回の『ゲイの図書館』もどうぞよろしくお願いします!!

 

WRITERこの記事の投稿者

ゆうじボーイ


ゲイの図書館

児童館に勤めています。仕事もほぼ遊び、休日も遊びの日々。
男性が大好きです。好きなタイプはアナウンサーっぽい誠実な人。

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