19日目:カミングアウト(後編)

 

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2018.10.08

 
みなさんこんにちは!先日、長年の布団暮らしからベッド暮らしにレベルアップしたりっつです。

前回は、ふとした拍子に聞こえた会話で、傷ついたこと、そして、図らずも女装をカミングアウトすることになった友人と疎遠になった話を書かせていただきました。偏見の息遣いを至近距離で感じ、とん、と胸を突かれたかのような鬱感を覚えました。

さて、実は私、もう一人カミングアウトをした人物がいます。
前回の記事で、一緒にお昼ご飯を食べていた友人、大学同期のFさんです。
 

ケース5:大学の同期

その日は、家に帰って自撮りでもしようと画策していたのですが、大学同期と話しているうちに飲み会をすることになりました。ちょうどお酒を飲みたかったこともあり、まぁいいかとお店に向かいました。

ひとしきりわいわい飲んだ後、私はしっかり酔っぱらってしまいました。低血圧な体質も相まって、かなりふらふらしながら、大学同期のFさんと歩いていました。Fさんとは家も近いため、帰宅の方向が同じだったのです。水を買ってきてくれるなど、ひとしきりFさんに迷惑をかけてしまいました。

そんな中、僕はふと口走っていました。

「僕、女装してるんや」

どうしてこの時この言葉が出たのかは今でもわかりません。

「この前、写真見せたやろ…? 実は僕、結構ガチでやってるんだよね」

実は以前の飲み会で、Fさんには1枚だけ写真を見せたことがありました。その時は本格的にやっていることは言いませんでした。

Fさんの表情は特に変わりませんでした。

「へえーそうなんだ。いいと思う。」

こころなしかFさんが好奇心を向けているのを感じました。

「うちで飲んでく?まぁ道具が散乱してるけど」
「いく」

Fさんは少し乗り気なように見えました。じゃあまた15分後に、ということでいったん別れ、僕は部屋を片付けました。あえて、ウィッグや服などは隠しませんでした。
 

「女や男の役割が重荷になることってあるよね」

部屋に来たFさんはふふふと笑い出しました。

「ほんとに、女装してるんだね」
「うん」

Fさんは僕の持っている女物の服を見てまたふふふと笑います。

「めっちゃあるじゃん」

そして、1枚1枚畳んでいきます。

僕はもう正常な判断はできませんでした。

「今から女装しようか?」
「いいんじゃない」
 
30分後、女装した私と、Fさんは一緒に自撮りをしていました。

「悪くないと思う」

Fさんはまたふふふと笑います。

「誰やんww」
「…りっつです」
「ディープな君を知ってしまった」

Fさんは今の状況を楽しんでいるようでした。

「引かないの?」

私は恐る恐る尋ねます。

「引かないよ。私も男装したかった時期あるし」
「へ?」
「女や男の役割が重荷になることってあるよね」


Fさんは淡々と話します。

「私も男になりたいって思った時期があるし、男装してみたいと思ってた」

私は驚きで固まってしまいました。

「学ランとか着たい」
「そうなのか。知らなかった…。じゃあ今度、男装バーでも行ってみる?」
「行く。」
 
Fさんには後日、洋服のお買い物に付き合ってもらいました。服を選ぶのってすごく楽しいものです。特に友達と行くと、なおさらです。


▲一緒に選んでもらった秋服。おしゃれですなぁ。
 

受け入れてもらえたらそれでいい

こうしていろいろな人にカミングアウトしてみて、私は一つ大事なことに気が付きました。

なぜカミングアウトができなかったのか、それは自分が傷つかないようにするために他ならなかったのです。そもそも、ある程度の信頼関係があれば、カミングアウトしても関係性は変わりません。むしろ好転することさえあるのです。

とはいえ、まだ自分は誰彼かまわずカミングアウトすることはできません。女装を嘲笑していた学校の人や、友達関係の縁がなくなったTくんの例もあります。「女装」に関してはまだまだ偏見だらけです。そんな偏見はあるべきではありませんが、その考え自体も我々女装している側の「偏見」なのかもしれません。

それでも、話をしてみることは一つの手段ではあると思うのです。自分が信頼できる、この人なら受け入れてくれると思った人に話してみることで、新たな発見ができる可能性もあります。理解はいりません。受け入れてもらえたらそれでいいのです。
 
本当はカミングアウトなんて大仰な言葉を使うことなく、ただの一つの趣味として、それこそ映画鑑賞、スポーツ観戦、旅行、読書、そういったものと同列に並ぶ世界が理想です。近年では、メディアに取り上げられることも多くなり、男性的な体格に合わせて可愛い服を販売するブランドや、大きめの靴を販売するブランドも出現するようになってきました。女装のイメージが向上し、偏見が少なくなっているように思われます。

しかし、残念ながら現段階において女装は「珍しいもの・奇異なもの」としてメディアが注目しているものにすぎない点は見逃せません。「偏見」をネタにして食い物にされている感を否定することは難しいものがあるのです。それでも世間にどんどんと女装文化が拡がることに大きな役割を抱いていることは間違いありません。一般化が進んでいけば、女装に抵抗がある人も少なくなるのではないかと思います。それは、女装が一つの趣味として語れる世界に近づくことを意味します。
 
カミングアウトにまつわっていやな思いもしましたが、私はまだしばらくは女装をし続けるつもりです。
 


だって。

 
女装って楽しいじゃん?
 

 

WRITERこの記事の投稿者

りっつ


現役JD(女装大学生)。目的のない街歩きを楽しむ空気みたいな人。来世は風になりたい。

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