女装的生活 ―DAY 4: ちこの場合

 

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女装的生活 ―DAY 4: ちこの場合

2018.04.18
 

ひとくちに「女装」といっても、その内側は十人十色の千差万別。セクシュアリティや女装をはじめたきっかけ、女装に対する向きあい方などは人によってさまざまです。
 
ひとりひとり違っているなら、ひとりひとりの話を聞きたい。ここでは毎回ひとりの人物にスポットを当て、それぞれの「女装的生活」を掘り下げます。
 
今回は、東京都内に住む大学生のちこさん(@angel_chicolate)にお話を伺いました。

女装グッズ一式もらう

――今って学生さんですか? 
 

ちこ 春から2年生になります。

 
――2年生に。……なにの?

  
ちこ 大学の……(笑)。

 
――あっ、失礼しました……(笑)。Twitterの写真を見ていて、もしかして高校生なのかな? とか思ってしまって。

 

ちこ 大学生ですね。

 
――どういったきっかけで女装をはじめたんですか?

 

ちこ きっかけっていうのが特にないんですけど、なんか、むかしから、かわいい人とか見て「かわいいなー」って思ってて。

 
――それは女性を見て、ってことですか?

 
ちこ そうです。で、自分もそういうふうになりたいなーって感じで。高3の1月だから去年、17年の1月にはじめました。

 
――あそっか、その頃はまだ高校生だったんですね。でもその時期って受験真っ只中じゃないですか。

 
ちこ そうですね。まあたしかにストレス発散……ではあったかもしれない(笑)。

 


――特に誰の影響でもなく、はじめたっていう感じなんでしょうか。 

 

ちこ そうですね。女装してる人たちがいるっていうのは見聞きしてたので、まあ、やってみようかなっていう、気分にはなりました。


――段階というか、最初は何からはじめました? 

 
ちこ 段階っていうよりも、なんか、もともとは女友達と話してたんですけど、そしたらその子が一式ぜんぶ揃えてくれて(笑)。それでもう、バッと。

 
――一式全部! それはいいですね。
 

ちこ だから「徐々に」とかじゃないんですよ。
 

――そのお友達がもうある意味、プロデュースしてくれたわけですね。
 

ちこ そうなんですよ(笑)。

 
 ――ちこさんは、女友達とか多かったタイプですか?

 
ちこ ああーそうですね、半分くらいは女子でしたね。

 
――なんとなくそう思いました。クラスの女子から「絶対(女装が)似合う!」みたいに言われてそうですよね。

 

ちこ そんな感じでしたね(笑)。

 
――イチから全部はじめて、って人が多いと思うんですけど、そうやって最初に一式揃えてもらってっていうのだったらいいですね。それって学校の友達ですか?

 
ちこ そうですね、学校の友達。

 
――高校は都内だったんですか?

 
ちこ いや、もともとは地方にいました。転勤族で、3年生のなかばに東京に転勤が決まったから「残り半年なら残れば?」ってことになって、僕だけ地元に残って。大学入るときに、東京に来ました。

 
――高校卒業までは一人暮らしで、大学に入ると同時にまた実家暮らしになったと。変則的ですね。

 
ちこ そうです。だから今は(女装が)やりづらいんですよね。

「みんなに "あざとい" って言われるんで」

――今はどんな感じでやってるんですか?

 
ちこ 今は、昼間に親がいないのでそのときにやるか、呼ばれたところに行って、着替え場所を用意していただいて、そこで着替えてから撮影したりとか。

 


――ご家族はまだなんにも知らない?

 
ちこ いちおうこの前、大学の学園祭で、やったんですよ。そのときは、家族も見てます。

  
――おおー。でも、日常的には……

 
ちこ やってるとは思ってない。そんときだけだと思ってます。

 
――それだと洗濯とか大変じゃないですか。
 

ちこ そうですね……あんまりしない(笑)。いちおう自分のものは自分で洗濯してるんですけど、干すとバレるじゃないですか。だからあんまり、それはしない(笑)。たまにまとめて、家族がいないときに洗濯して。

 
――鬼のいぬ間に(笑)。でも自分の部屋にはいろいろ置いてあるわけですよね。


 
ちこ ありますね。ダンボールに一式まとまってて、タンスにもけっこう入ってて、開けられるとちょっとまずいかな? みたいな。

 
――そういうグッズとかはどこで揃えてるんですか?

 
ちこ 基本的にAmazonですね。最初は友達からもらったりしましたけど、通販以外だと、百均で買ったぐらいですね。あとは全部通販ですね。

 
――ああー、じゃあ街のショップとかには。

 
ちこ 行ったりしないですね。ちょっとなんか、周りの目を気にしちゃって。

 
――A面ではあんまり出歩いたりしないですか?

 
ちこ そう……ですね、Twitterの友達と出かけるときはA面で行くこともありますけど、自分ひとりでは、めったにないです。

 
――女装をはじめてからはTwitterで知り合ったお友達とリアルで会ったりとかもして。

 

ちこ そうですね。この前も15、6人でお花見しました。

 
――大勢ですねー! みなさんだいたい同年代くらい?

 
ちこ そうですね。でも下は15、16ぐらいから、上は26ぐらいまで集まって。

 
――Twitterといえば、ちょっと拝見したんですけど、るいさん(@ruiruillllっていうのは、どういう関係にある方なんですか?

 
ちこ Twitter上の彼氏的な、存在ですね。

 
――Twitter上の彼氏。ちこさんは「女装男子」で、るいさんは「男装女子」なんですね。

 

ちこ そうですね。もともと僕、男装さんが好きで。だからTwitterで見てたんですよ。で、かわいいなって思って、話しかけるようになった。基本的に恋愛対象は女性なんですけど。

 


――ちこさんはストレート? 

 
ちこ 僕はもう、女性だけですね。

 
――女装するようになってからもそこは変わりなく。

 
ちこ 変化はないですね(笑)。男の人に言い寄られてもべつに嫌とかじゃないんですけど、でもべつに自分は、そっちにはいかないかなって感じですね。

 
――女装されている方に本気で惹かれるっていうことはないんですね。

 
ちこ 心が惹かれるっていうことはないですね。リスペクトとか、そっち系になっちゃいますね。

 
――人格とかは変わったりしますか? 女装しているとき。

 

ちこ 僕どうなんですかね……? 自分ではそんなに変わってるとは思ってないんですけど。なんかもう、ふつうにこの状態(B面)からすでに、みんなに「あざとい」って言われるんで(笑)。

 
――ハハハ!(笑) 

 
ちこ もうしょっちゅう言われるんで。

 
――厳しいな、みんな。

女子高生あこがれ

――でも実家住まいの人は実家の話を聞くのが面白いですよね。どうやりくりしてるのか、みたいな。

 
ちこ なんか一回、ウィッグを洗って、部屋にある台に立てて干してたんですけど、ふつうにゲームしてたら、親が入ってきて。目の前に(ウィッグが)あるじゃないですか。「やばいな」って思って。でも、ふつうに会話して、いなくなったんですよ。「どうなったんだろう……」って(笑)。

 
――ああ、特に何も言及されず。

 
ちこ 何も言われなくて。ちょっと、やばいですよね(笑)。なんか言ってくれればよかったんですけど。どう思ってるか不安ですよね。

 
――「それ何?」とかも特になく。

 
ちこ 服とか、干したまま忘れちゃって寝たときとかもありますね。廊下に干すんですけど、(親が)通るんですよ。でも、なんも言われないんで。どうなんですかね(笑)。

 
――服は、どういう系が多いんですか?

 
ちこ 僕は目標が女子高生なんで、制服系がけっこうありますね。私服は、最初にもらった一式と、人からいただいたのが何個かある程度で。

 


――目標が女子高生っていうのは、最初からそうだったんですか?

 

ちこ そう、あこがれというか。高校が、すごい校則が厳しい学校で。僕の女子高生のイメージって「ミニスカ」で、イケイケな感じだったんですけど、僕の高校の制服は全身灰色で、靴下まで指定されてスカートも膝下で、すごい地味〜〜な感じだったんで。それのせいかもしれないんですけど、すごい、あこがれが強くて。

 
――ああー、なるほどなるほど。じゃあ当時は他校のイケイケな女子高生とか見ると「いいなあ」みたいに思ったりしましたか?

 

ちこ そうですね。だからそこで見たりして、「あの学校がよかったな〜」みたいに思いましたね。

 
――それは校則の厳しい学校にいるとみんな思いますよね。あそこの学校がよかったな、って。でも、その理想の制服みたいなのを、自分が着るっていうのはまた面白いですよね。

 
ちこ なんか、むかしから少女マンガをけっこう読んでて、姉の影響なんですよ。「りぼん」とか「ちゃお」とかが家にあったんで、見てて。そういう少女マンガだと高校とか、中学とか、出てくるじゃないですか。文化祭だったりとか、楽しそうじゃないですか。そのイメージがすごい強かったんですよね。でもじっさい自分が高校に入ると、なさすぎて(笑)。

 
――理想と現実とのギャップが……。

 

ちこ そう、だから、あこがれが強かったんですよね。

 
――振り返ってみて高校生活はどうでしたか? 全体的には。

 

ちこ いやあもう……灰色でしたね。勉学、優等生、みたいな感じでした。

 
――ザ・進学校みたいな感じ?

 
ちこ あーほんとそんな感じでした。

 
――そういうところって無駄に校則厳しいですもんね……。

 
ちこ 勉強もできて、自由、だったらいちばんいいんですけど。

 
――東京の私立の学校とかすごいあこがれましたよね。

 
ちこ 文化祭とかも、大学の友達に話聞いてたら「コスプレしたよ!」とか「おばけ屋敷したよ!」みたいな。そういう楽しそ〜〜な、少女マンガに出てきそうなイベントとかあるのに、うちの高校はなんか「大学のレポートを展示したよ」みたいな……(笑)。そういう感じで。

 
――(笑)。模造紙でね。ボードに貼り出して。

 
ちこ 
そうそうそう! それだけだったんで。ほんとになんか、やり直したいんですよね。


――そっか……その気持ちはきっと今の活動にすごく影響を与えてますね。

 
ちこ たぶん影響してますね。「こういう子がいてほしかった」みたいな。それを、自分が体現してるっていう感じですね。 

 

生まれ変わるなら女の子

――でもそんな灰色の高校生活から解放されて、大学生活はどうですか? 青春は。

 
ちこ 大学もまだ……そういうのないですね。あ、でも、大学の学祭で、やったんですけど。

 
――ああ、そうでしたね。女装を。

 

ちこ 『けいおん!』っていうアニメあるじゃないですか。サークルでそのバンドをやりたいっていう話になって。

 
――おおー! それこそまさに、ちこさんの理想という感じがしますが。

 

ちこ まあそうですね(笑)。で、メンバーの一人が「どうしても女装がしたい」って言い出して。結局その一人に押し切られて、みんなやることになったんですけど、でも僕だけ自力で全部できる、みたいな(笑)。

  
――そうですよね。「お前……やたら慣れてんな」みたいにならなかったんですか。

 
ちこ まあ、なったんですけど(笑)。そこはうまくごまかして。

 
――「コイツ異常にメイク上手いぞ……」みたいになりますよね。

 
ちこ そうですね。自分で言うのもなんですけど一人だけ、かわいくて(笑)。演奏中とかも「かわいいよー」みたいに、言われたりして。気分は悪くはなかったですけど。

 
――そりゃそうなりますよね! みんなの前で、っていうのはそれまであまり経験なかったと思いますが、どうでした?

  
ちこ 褒めてもらえたんで、うれしかったですね。楽しかった。

 
――それはいい機会でしたね。ちこさんは音楽も好きなんですか?

 
ちこ そうですね。中学のときから吹奏楽部だったので。

 
――吹奏楽部っていうとまた、女子が多い世界ですよね……。

 

ちこ そのときも男子2で、女子40、とかでした。だからかわかんないですけど、僕は、男子女子での区別ってのが、ないですね。そういうのが嫌いなんですよ。男だから、女だから、っていうのが。すごい嫌いですね。
 
よく女子供は逃して、男がなんかするみたいな、あるじゃないですか。そういうのムカつくんですよ。強い人が残って弱い人を守る、っていうのだったらわかるんですけど、女だから弱いっていうのは違うじゃないですか。男だから強いっていうのも違うなあと思って。それが嫌いですね。
 


――女性は弱いから下がっててっていうのも嫌だし、逆に男だからっていうだけで前に出なきゃいけないっていうのもそれはそれで嫌ですよね。

 

ちこ その差別が嫌いなんですよね。あとなんか、今の時代って女性のほうが強い感じするじゃないですか。女装をやってるのはそっちの立場に立ちたいから、っていうのもあるかもしれないですね。
 
「むかしは男のほうが偉かったからしょうがない」とか言うけど、僕むかし生きてないしみたいな(笑)。思っちゃうんですよ。すごい理不尽に感じちゃうんですよね。

  
――日常でもそういう区別というか、感じることありますか?

 
ちこ ありますね。大学とかでも女子のほうがチヤホヤされる感じがあって。そういうのを見てて「僕もあっちだったらな」みたいに、思うことはありますね。
 
生まれ変わるなら女の子に生まれ変わりたいですね。性自認は男なんで、今はべつにぜんぜん男っていう気分ですけど、でも女の子に、あこがれがありますね。

 
 ――今から「女の子になりたい」っていうことではなく。

 
ちこ ではなく。今は男だけど、生まれ変わったらって感じですね。

 
――それっていうのは、今、置かれている役割として、女性のほうがいいっていうことなんですか? それか、単純に体の性として女の子がいいっていうことなんですか?

 
ちこ たぶん役割がおなじだったら、どっちでもよかったと思います。現状として、自分が弱いほうの立場に置かれているっていうのが嫌なんで、そっち側に行きたいなっていう感じですね。

 
――なるほどなるほど。さっきおっしゃっていたような男性としての役割が、重荷になっているところがあるんですかね。では生まれ変わったら女性になるとして、今、女装をしているなかでは、どういう部分に魅力を感じていますか?

 
ちこ なりたいもの、自分が見てたものに自分がなれてるっていうのがやっぱ、いいですね。かわいい人を見ていて、それになりたいなっていうのではじめたので、それに近づけるのが、うれしいですね。

 
 


――今後やっていきたいことはありますか。 

 

ちこ 今はそうですね、外に、一人でも出たいんですけど、出れない理由っていうのが、声が、できなくて。

 
――ああー、声が。そこはやっぱり、足かせというか。

 
ちこ そうなんですよ。完パスできればバンバン外に出てくんですけど。

 
――なるほど。見た目ではもうバレないですよね。

 
ちこ まあ、いちおう……どうなんですかね(笑)。

 
――そう思いますよ。でもやっぱり声は、ハードルというか。

 

ちこ できないんですよね。ふと思ったときに動画とか見て練習したりするんですけど、なんか違うんですよね。毎日やろうと思っても、家に誰かしらいるから、マズいじゃないですか。

 
――そっかそっか。外に出る前に家を出なきゃいけないっていう。

 
ちこ そうなんですよ。

 
――でもさっきの役割の話じゃないですけど、声にしたって、周囲が気にさえしなければ、わざわざ練習しなくていいわけですもんね。

 
ちこ まあそうなんですけど、でも、女装したなら、僕は女の子として認識されたいんですよね。「女装の人」として受け入れられたいわけじゃなくて。

 
――なるほど。そこは周りがどうこうじゃなくて、自分が納得できないっていうことですね。

 
ちこ そうなんですよ。

 
――じゃあまだまだ発展途上というか、成長の途中ですね。

 
ちこ はい。成長できたらいいですね(笑)。

 


 

WRITERこの記事の投稿者

K野


たすけて・・・

 
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