女装的生活 ―DAY 1: りっつの場合

 
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女装的生活 ―DAY 1: りっつの場合

2018.02.28


日本のドラマで最近よく目にするのが、女装姿のキャラクターたち。今をときめくイケメン俳優たちが披露する女装はみな一様に美しく、ゆえに、その姿は非現実的なファンタジーとして映ることもしばしばです。
 
では、そうしたメディア作品における「役」ではなく、実生活に女装を取り入れている人々が見る日常の風景とは、どのようなものなのでしょうか?
 
ひとくちに「女装」といっても、その内側は十人十色の千差万別。セクシュアリティや女装をはじめたきっかけ、生活のなかで女装が占める位置づけなどなど、女装に対する向きあい方は人によってさまざまです。
 
ひとりひとり違っているなら、ひとりひとりの話を聞きたい。ここでは毎回ひとりの人物にスポットを当て、それぞれの「女装的生活」を掘り下げます。
 
今回はTwitterで4000人以上のフォロワーをもつ「女装男子」、りっつ@Ritz_chupaco)さんにお話を伺いました。

現実逃避から知った女装のこと

――りっつさんはいま大学生ということですが、おいくつですか?
 

りっつさん(以下、りっつ):いま、20歳です。

 
――若いですね! ふだん大学とかでは、男性として生活してるんですよね。

 
りっつ:はい、もう普通に暮らしてます。

 
――付き合ってる人はいますか?

 
りっつ:いま彼女います。

 
――そうなんですね。女装のことは彼女さんも知ってる?
 

りっつ:いちおう言いました。予想外のことだから、びっくりしてましたけど(笑)。最初は写真見せたら「かわいい」とか言ってたんですけど、そのうち何も言わなくなりました。
 

――何も言わなくなっちゃった(笑)。特にめずらしくもなくなって。
 

りっつ:どうなんですかね……。
 
 
 
 
――女装はいつからやってるんですか?
 

りっつ:うーん……。何をはじめとするかですよね。最初はまだ実家にいて、ちゃんと女装するみたいなのはできなかったので。
 

――大学に入るとき上京してきたんですね。
 

りっつ:そうです。で、東京に出てきて、やろっかな、みたいな。
 

――実家にいるときは、そもそもなんで女装のことを知ったんですか?
 

りっつ:もともとたぶん、なんていうんですかね、変身願望的なのがあって。たぶん現実逃避ですね(笑)。フフフ。
 

――なるほど、現実逃避。それは高校のときとかに?
 

りっつ:そうですそうです。
 

――やっぱり勉強とか大変だったんですかね。
 

りっつ:まあ勉強もあったんですけど、いろいろあって。
 

――それでネットとかでいろいろ調べて?
 

りっつ:調べて。でも最初はほんとにもう、現実逃避の手段だったんで、そこまでくわしく調べてはいませんでしたけど。
 

――じゃあそのとき身の周りに女装してる人がいたとかではなかった?
 

りっつ:そうですね。完全に自分で。
 

――東京に来る前はじっさいにやってみたりとかはぜんぜんしてなかったんですね。
 

りっつ:いちおう、地方の大きいドンキ行って、ウィッグだけ買ったことはあります。なんか、家では「勉強するから入って来ないで」って言って(笑)。
 

――中高生がよく言うやつだ。
 

りっつ:そうですそうです。そういう感じでした。
 
 

女装について「めちゃめちゃいろいろ調べたんです」

――それで、今はめでたく一人暮らしになって。じっさいに女装をやってみるときには、何かで学んだりしたんですか?
 

りっつ:最初は「自分がやりたいようにやろう」と思って、服とかも自分の好みで買ってたんですけど、そうするとやっぱりどうしても男の部分が出てきちゃうっていうか。やっぱ、(男女の)差があるわけじゃないですか。それで、思うようにうまくならないなって思って。
 

――自分が思ってたとおりにはならないというか。
 

りっつ:ならないんですよ。でもやっぱり「それっぽさ」を追究したくて。いちばん最初に立てた目標が、「街に溶け込む」っていうことだったので。
 

――あ、そこがひとつの目標になってるんだ。
 

りっつ:もともと現実逃避からきてるから、違う人間でいたい。(自分と違う)ひとりの人間だったら、普通に出歩けるはずだし、好きなとこにも行けるはずだし。ということは、バレちゃいけないな、っていう。
 

――じゃあ外出もぜんぜん女装で?
 

りっつ:今は、してます。
 
 
 
 
――でも家で女装をやりはじめるのと、それからじっさいに表に出るのと、ここでまただいぶ違うじゃないですか。
 

りっつ:ああそれはもう、ぜんぜん違います。
 

――それはなんかこう、「これならいけるだろう」っていう感触をつかむ瞬間があったんですか?
 

りっつ:とにかくめちゃめちゃいろいろ調べたんです。いろいろ。「絶対にバレちゃいけない戦い」みたいなのがあったから。
 

――日本代表みたいな。
 

りっつ:フフフフ(笑)。まずなんだろう、普通の人がどういうメイクをしてるかだったり、髪型だとか服装だとかっていうのを、とにかくもう道を歩くときはずっと見てます。
 

――ああー、なるほど。じっさいの、サンプルを見て。
 

りっつ:いちばんいいのはそれじゃないですか。モデルさんとかが通販で着てる服って、かわいいけど、あんな人いないじゃないですか(笑)。だから、それをマネしてたらダメだなって思って。
 

――あくまで普通にそこらへんにいる人、っていう。
 

りっつ:そうです。横断歩道とかいいですよ、すれ違えるから。すごい参考になる。
 

――じゃあけっこう人間観察というか。外では。
 

りっつ:すごくしてました。あと声と、骨格もやっぱり違うから、肩を、こう(寄せる)とか……。いろいろ調べた。
 
 
 
 
――身につけるものも、それ以外のことも、いろいろ研究して。
 

りっつ:それから実験的にTwitterに上げてみて、「たぶんいける」って思って、外に出たんです。
 

――反応とかが返ってくるから。
 

りっつ:返ってきて、「これなら外いけるかも!」みたいな。でも最初は緊張しました。今も緊張するんですよ。ブランクがあったりすると「大丈夫かな」って。
 

――ちなみに外出時は、トイレってどうしてますか?
 

りっつ:それはちゃんと、法律守って、男性用に。
 

――あ、そこは男性用なんですね。
 

りっつ:性自認は男だから。女装してるしせっかくなら……とは思いますけど(笑)、法律は守んなきゃと思って。

女装男子の解放感

りっつ:(女装は)趣味だけど趣味じゃないっていうか。なんか、なんていうんだろな。
 

――趣味だけど趣味じゃない。
 

りっつ:ほんとに、違う人間だと思ってるから。切り替えが。
 
 

 
――そっか。もとの人間のまま趣味でやってるっていうよりは、もう……
 

りっつ:もう、「なってる」。なんだろう、別世界に、スッと乗り移ってる感じ。
 

――面白いですね。それだったら、おなじ街に来てもぜんぜん意味が違いますもんね。
 

りっつ:ほんとに。切り替えてますね。
 

――じゃあじっさい女装して街に出ていくことの魅力っていうのはそういう、ぜんぜん別の人間になれるというのが。
 

りっつ:あるし、でもなんていうんだろう、結局、別の人間とは言ってるけど別じゃないというか。抑圧されていたものなのかわからないんですけど、すくなくとも、のびのびしているし、楽だし、とは思います。
 

――逆にいえば、男性として生活してるときは、窮屈さみたいなものを感じることが多いっていうことですか?
 

りっつ:そう、ありましたね。特にむかしは。たぶんそれが原因なんです。
 

――それはどういったことで?
 

りっつ:私は周りに気を遣うタイプで、学校とかでもすごい、頼られていて。家でも、いちおう長男なんだからっていうのもあって、期待もすごかったんですけど、理不尽なことを言われたりとか「男らしくしろ」って言われたりとか。だから、家族に対しても気を遣うことが多かったですね。「なんかなあ」ってずっとモヤモヤしてて。
 

――なるほど。けっこうむかしから、そういうプレッシャーを感じることが多かったんですね。
 

りっつ:そうですね。イヤミじゃないんですけど、ほんとに私、ふだんは人の前に立つとか、自分で言うのもアレですけど仕事もできるほうだから、けっこうストレスが溜まるんですよ。
 

――わりと責任ある立場に立たされるような。
 

りっつ:ほんとに。よくやります。
 

――じゃあクラスの中心じゃないですけど、学校でもそういう感じだったんですか?
 

りっつ:そうですね。成人式やったんですけど、学級長が仲良かったんでLINEしてて、「仕事やってくれない?」って言われて「いいよ」って言って。けっきょく全部やりました、幹事(笑)。ほんとに全部やりました。
 
 
 
 
――そうか、こないだ成人式だったんだ。けっこう言われたら断れないタイプ……?
 

りっつ:断れない(笑)。
 

――それだったら「別の人間」になることでだいぶ解放感あるでしょうね。
 

りっつ:うん。「自由に生きていいんだなー」みたいな。
 
 

 

釣り、テニス、絵、女装

――女装関係で知り合ったお友達もいっぱいいますか?
 

りっつ:うん。いますね。ネット経由で会ってみて、とか、お店に来てる人とか。そういうお店に行くと、友達ができて。最初は緊張しますけどね。でも一回知り合って仲良くなっちゃえばもう大丈夫なので。なんか最近、LINEもリア友が少なくて。たいてい上から5人くらいはそっちの友達ですね。だから一回友達ができちゃうとたのしいかも。
 

――仲間ができるとたのしくなりますよね。共通の話題があるから。
 

りっつ:そうですね、共通点。なんだろう、言い方はアレですけど、社会的に見たらまだまだ「弱み」だから、それを共有してるだけで謎の一体感はあります。
 

――謎の一体感(笑)。
 

りっつ:いろんな世代の人と関われるっていうのもいいですよね。
 

――いまTwitterだったら「#女装男子」みたいに言ってる人がけっこういると思うんですけど、「女装子」とか「男の娘」とかっていろいろ呼び方あるじゃないですか。自認としてはどれですか?
 

りっつ:私は「女装男子」。
 

――それぞれどういう違いがあると思いますか?
 

りっつ:あくまで私のイメージですけど、「女装男子」っていうのは趣味としてやってる人で、「男の娘」っていうのはたぶん女の子になりたい人で、「女装子」っていうのは古い女装っていうイメージ……かな? っていう。でもそのへん私もよくわかってないんですよ。
 

――りっつさんのばあいは女装をしていても、「女の子になりたい」という気持ちがあるわけではないと。
 

りっつ:そうですね、私はないですね。それと私は女装するようになって、「やっぱり自分はストレートなんだな」って認識しました。逆に。まあストレートなのか、もしかしたらアセクシュアルなのかもしれない。
 

――ああー、そうなんですか。性別関係なく、そうした感情じたいがあまり強くない?
 

りっつ:うーん。もしかしたら。かもしれないな? とは思ってます。
 
だからもう、釣りとかと一緒なんですよ、私にとっては。釣りとかテニスとか、絵を描くとかとおなじで、みんな趣味でストレス発散するじゃないですか。それがただこれ(女装)というだけなんで。
 

――なるほどなるほど。スポーツみたいに、人が熱中して、打ち込んでいるもの。ストレートであるりっつさんにとっては、「女装」もそういう真剣に取り組める趣味の一ジャンルだと。
 

りっつ:っていう認識ですね。
 
 
 
 
――いまTwitterでつながってる人たちっていうのは、りっつさんとおなじようにストレート男性で女装をやっている人、ここでいう「女装男子」が多いんですか?
 

りっつ:うん。そうですね。ただリアルで会ったときは、最初に「なんではじめたの?」ってきっかけ聞くようにしてるんです。最初に「女の子になりたかった」って言う人と、あと「いろいろあって」って言う人がいて。「いろいろあって」って濁す人はだいたいこっち側。男子側なんだなって思ってます。それがわかると、やっぱり話しやすいから。
 

――誰か、あこがれみたいな人もいるんですか?
 

りっつ:私はそうですね。変身願望があった中学ぐらいのときに、ネットで「伝説」と言われてた人がいて、その人のブログとか見て「やばいなこれ」と思ってて。「すごい」とか思ってたんですけど、まさか自分が女装する側になるとは思ってなかった(笑)。
 

――そのあこがれの人にはまだ会ってない?
 

りっつ:会ってないです。でも逆に、Twitterでたまに「(りっつさんに)あこがれて女装はじめました」みたいなDMが来たりもするので、それがすごくうれしいですね。広がっていけばいいなと思います。
 

――おお。かつての自分のような子たちが……。
 

りっつ:でもいまは、やっぱり環境がすくないと思うんですよね。女装をはじめても一人だとさみしいから、集まれる場所とかがもっと増えたらいいなって思う。
 
まだまだ認知されてないから、世間の人はわりと「あ、LGBTだから女装してるんだ」みたいに思いがちじゃないですか。でもそれがすべてじゃない。だから、「女装=LGBT」みたいな誤解があるなら、それは壊したいんですよ。
 

――まさにさっきおっしゃってたことですよね。釣りやテニスみたいな……
 

りっつ:釣りとかテニスとか、絵を描くとか。私にとってはそれと一緒なんです。本気の趣味だからこそ、女装という文化をもっともっと広めたいし、私にとっては、それがないとやっていけないくらい大事なものなんです。
 
 
 
 
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WRITERこの記事の投稿者

K野


たすけて・・・

 
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